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コンセンサス抗癌剤の副作用と対策 Home
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巻頭言.抗癌剤の副作用;予期して臨むことの大切さ
1.消化器症状
 (1)内科の立場から;消化器症状に対する支持療法
 (2)外科の立場から
2.骨髄抑制
 (1)好中球減少症
 (2)血小板減少と貧血
皮膚症状,脱毛,粘膜障害
神経症状
浮腫
間質性肺炎
心毒性
肝障害と腎障害
肝障害と腎障害
国立がんセンター中央病院乳腺・腫瘍内科
河野 勤/Tsutomu Kohno
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抗癌剤による肝障害
 抗癌剤治療を開始する前あるいは抗癌剤治療の最中においては,肝機能の評価は重要である。抗癌剤以外のほとんどの薬剤においては,末期の肝硬変以外の状態においては薬剤のクリアランスが問題になることは少ない。しかし抗癌剤においては治療域と毒性域の境界が近いため,わずかな肝機能障害によるクリアランスの低下が大きな毒性につながることとなり注意が必要である。

 まず抗癌剤治療を行うさい,使用する抗癌剤によってどのようなタイプの肝機能障害が起こり得るかを知っておく必要がある。また,抗癌剤投与前より肝機能障害を伴う癌患者,あるいは抗癌剤により肝機能障害をきたした患者において,治療の継続が必要な場合に用量の調整をどのように行うべきかについて知っておく必要がある1)

A. 抗癌剤による肝機能障害のタイプ
 担癌患者において肝機能障害を認めたさいにまず必要な検査項目は,血液生化学検査および超音波検査やCTなどの画像検査である。とくに閉塞性黄疸による肝機能障害の場合には画像検査により比較的容易に診断がつき,胆道ドレナージなどの処置を検討する必要がある。しかし,抗癌剤による肝機能障害であるのかあるいはその他の原因による肝機能障害(癌の進行,他の薬剤の影響など)であるのかを見分けることは必ずしも容易ではない。よって抗癌剤による肝機能障害のタイプを知っておくことはこれらの鑑別に役立ち,その後の治療の進め方を決めるさいの参考になる。

1) アルキル化剤
 Cyclophosphamideはそれ自体には抗腫瘍効果はなく,肝代謝により活性体であるphosphoramide mustardとacroleinに変換され抗腫瘍効果を現す。通常投与量では肝毒性をきたすことは少ない。血管炎の治療に用いられたさいに,とくにazathioprineと用いられたさいに肝壊死をきたしたとの報告がなされている。Ifosfamideもまれに肝機能障害をきたすが,その頻度は約3%程度とされている。

2) 代謝拮抗薬
 Cytarabineは肝臓において代謝を受けara-CTP三リン酸に変換され,DNA合成を阻害する。初期の報告においては,85人の白血病患者において37人の肝機能障害が生じたとされている。しかし,これらの患者においてはcytarabine投与以前に肝機能障害をすでに有していたりあるいは感染症予防目的に併用する薬剤も多いため,cytarabine単独によるものかどうかは不明なことが多い。大量cytarabineの72時間持続投与を受けた27人の患者においては,24人において一過性の肝機能障害を生じたとされる2)

 5-fluorouracil(5-FU)は経静脈投与された後,活性体である5-FdUMPに変換されチミジン合成を阻害する。およそ90%は肝臓のdihydropyrimidine dehydrogenase (DPD)によって代謝されている。よってDPD欠損がある場合やそれが阻害された場合には,代謝,排泄が遅延して毒性が高度となる。

 Gemcitabineは一過性のトランスアミナーゼ上昇をもたらすことが多いが,臨床上問題となることは少ない。

 Methotrexateはdihydrofolate reductaseと結合して,DNAとRNAの合成に必要なtetrahydrofolic acidの産生を阻害する。標準量のmethotrexateはそのまま尿中に排泄されるが,高用量であると部分的に肝臓において7-hydroxymethotrexateに代謝される。Methotrexateは高用量で使用されると,可逆性のトランスアミナーゼの上昇をきたす場合がある。

3) 抗癌抗生物質
 Doxorubicinやepirubicinはほとんどが肝臓で代謝され,およそ80%が胆汁へ排泄されるが,肝障害をもたらすことはまれである。胆汁うっ滞がある場合には,排泄の遅延が生じ骨髄抑制や粘膜傷害の副作用が増強する。

4) チュブリンに作用する抗癌剤
 Vincristineとvinblastineなどのビンカアルカロイドは主に肝臓で代謝され,胆汁より排泄され一過性のASTやビリルビンの上昇が認められる。Vinorelbineにおいても一過性のASTやビリルビンの上昇が認められる。

 Etoposideは通常量において肝毒性はまれであるが,高用量では高ビリルビン血症やトランスアミナーゼやALPの上昇をきたす場合がある。しかし,通常量においても高度の肝細胞障害がまれに生じることがある。

 Paclitaxelを正常の肝機能の患者に投与した場合においても,ALPやAST,ビリルビンの上昇が認められる。この肝機能障害に用量依存性は認められず,長期投与を行っても増悪することはない。

5) プラチナ製剤
 Cisplatinは通常量においてはほとんど肝障害をもたらすことはないが,高用量においてはASTの上昇が認められる場合がある。Carboplatinやoxaliplatinにおいても,軽度の可逆的なALPやASTの上昇を認める場合がある。肝切除の前にoxaliplatinと5-FUによる治療を行った肝転移を伴う大腸癌患者においては,脂肪変性や肝血管障害が認められたとの報告もある3)

B. Veno-occlusive disease(VOD)
 骨髄移植患者においては,大量化学療法や全身放射線照射に伴ってveno-occlusive disease(VOD)が生じることがある。VODは肝小葉中心および小葉下の静脈血流障害によって生ずる肝障害である。抗癌剤投与後,肝静脈内皮細胞障害により非血栓性静脈閉塞・虚血を生じ,小葉中心性出血,肝細胞壊死へと進展する。抗癌剤投与後,突然発症し急激に増悪する場合が多い。VODの初期症状は疼痛を伴う肝腫大,急速に貯留する腹水,体重増加,ビリルビンの急激な上昇などである。発症率は10〜20%で,死亡率は7〜50%と報告されている。確立した治療法はなく,塩分,水分制限による対症療法しかない。

 リスクファクターとなる抗癌剤としては大量のcyclophosphamideやbusulfan,通常量ではdacarbazine,6-thioguanine,6-mercaptopurine,azathioprineなどがあり,ホジキンリンパ腫で使用されるABVD療法においても報告が認められる。Dactinomaycinとvincristineによって治療されたWilms腫瘍においては,1.4%においてhepatopathythrombocytopenia syndrome(HTS)が報告されている。

C. HBVあるいはHCV陽性患者における抗癌剤治療
 B型肝炎あるいはC型肝炎といったウイルス性肝炎の患者においては抗癌剤による肝障害をきたしやすく,またウイルスの増殖において再活性化(reactivation)をもたらし肝炎を悪化させる場合がある。

1) HBVの再活性化
 全身化学療法を行った患者においてHBVの再活性化が生じたという報告は多数認められ,HBs抗原陽性の患者においては約20〜50%において生じる。リスクファクターとして,若年,HBe抗原陽性,HBV DNA高値,リンパ腫,anthracyclineの使用,ステロイドの使用などが報告されており,また最近においてはrituximabによるHBVの再活性化も報告されている。再活性化の予防に関してlamivudineの有効性が示唆されている4)。化学療法開始7日前よりlamivudineを100mgにて内服した258人のHBs抗原陽性の癌患者において,lamivudineを服用しなかったhistrorical controlの193 人と比較すると,有意にHBVの再活性化の頻度が減少した(4.6% 対 24.4%,p<0.001)。

2) HCVの再活性化
 HCVの再活性化による重篤な肝炎についての報告はケースレポートにより認められるのみであり,全身化学療法との関係はHBVほど明らかにされてはいない5)

D. 肝機能障害患者における dose modification
 抗癌剤による肝毒性において,上述した薬剤の毒性の特徴を把握しておくことが重要である。投与前よりすでに肝機能異常を呈している場合は,表1のような投与量修正(dose modification)が必要になる。これらは大半が経験的に設定されているものが多い。

表1
肝機能障害時における抗癌剤の投与量変更基準


抗癌剤による腎障害
 抗癌剤は腎障害をもたらすことがあり,それにより腎機能が低下すると抗癌剤の排泄が遅延し全身的な副作用が増強する。よって,抗癌剤による腎障害の特性を理解することは重要である。また腎機能障害のある患者においては,投与量の調整(dose modification)が必要となる6)

A. 抗癌剤による腎機能障害のタイプ
1) プラチナ系薬剤
 プラチナ系薬剤のなかでcisplatin(CDDP)は多数の癌種で用いられる抗癌剤であり,かつもっとも腎障害をきたしやすい薬剤として有名である。細胞内のような低Cl環境下においては,CDDPのCl基がOH基に変換されやすくなり,続いてp450によって腎毒性の強い水酸化ラジカルを生じるとされる。CDDPを投与された患者の約25〜42%において軽度の腎機能低下が生じるとされる7)。またクレアチニン上昇のほかに低マグネシウム血症が半数以上において生じる。

 CDDPによる腎障害の予防については大量補液と利尿薬,また腎毒性のある薬剤との併用を避けることがもっとも重要である。CDDP投与前から投与後数時間の間は生理食塩水を250ml/時間で投与するのがよい。尿量が不足する場合はmannitolやfurosemideといった利尿薬を投与する。3%食塩水による腎障害の予防効果も示唆されている。

 また,carboplatinやoxaliplatinが腎機能障害を引き起こすことは少ない。

2) アルキル化剤
 Cyclophosphamideによる泌尿器系統の副作用としては,出血性膀胱炎が有名である。またADH分泌を増加させることにより自由水の排泄を阻害し,低Na血症を生じる。予防のためには,生理食塩水を点滴し尿量を保つことが重要である。Ifosfamideもcyclophosphamide同様に,出血性膀胱炎をきたす薬剤として重要である。Ifosfamideによる腎障害は近位尿細管障害が主であり,また尿細管性アシドーシスや低リン血症を引き起こす。

3) 抗癌抗生物質
 Mitomycin Cによる腎障害として多いものは,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)あるいは溶血性尿毒症症候群(HUS)である。これは治療後少なくとも6カ月以上経ってから生じ,蓄積投与量と発生頻度には相関が認められる。

 Bleomycinにおいて腎毒性の報告は認められないが,腎機能障害があると排泄が遅延し肺毒性などの副作用が増強するため注意が必要である。

4) 代謝拮抗薬
 Capecitabineは他の5-FU製剤が主に肝排泄であるのに対して,腎機能低下患者においては副作用が増強することが知られている。

 Methotrexateは0.5〜1.0g/m2の投与量においては腎毒性は認められないが,1g/m2以上の大量methotrexateの投与は尿細管障害をもたらす。とくに脱水や酸性尿においてはリスクが増すとされる。十分な尿量の確保と尿のアルカリ化により腎障害のリスクを低下させることが可能である。

5) ビンカアルカロイド
 Vincristine,vinblastine,vinorelbineは,少数例においてSIADHの発症の報告がされている。

B. 腎機能障害患者における dose modification
 抗癌剤による腎毒性において,上述した薬剤の毒性の特徴を把握しておくことが重要である。投与前よりすでに腎機能異常を呈している場合は,表2のような投与量修正(dose modification)が必要になる。これらは大半が経験的に設定されているものが多い。

表2
腎機能障害時における抗癌剤の投与量変更基準


●文献
1) Perry M:Hepatotoxicity of chemotherapy.URL:http://www.uptodate.com.2006.
2) Donehower RC,et al:Pharmacology and toxicity of high-dose cytarabine by 72-hour continuous infusion.Cancer Treat Rep 70:1059〜65,1986.
3) Rubbia-Brandt L,et al:Severe hepatic sinusoidal obstruction associated with oxaliplatin-based chemotherapy in patients with metastatic colorectal cancer.Ann Oncol 15:460〜6,2004.
4) Yeo W,et al:Lamivudine for the prevention of hepatitis B virus reactivation in hepatitis B s-antigen seropositive cancer patients undergoing cytotoxic chemotherapy.J Clin Oncol 22:927〜34,2004.
5) Vento S,et al:Fulminant hepatitis on withdrawal of chemotherapy in carriers of hepatitis C virus.Lancet 347:92〜3,1996.
6) Merchan J,et al:Chemotherapy and renal insufficiency.URL:http://www.uptodate.com.2006.
7) de Jongh FE,et al:Weekly highdose cisplatin is a feasible treatment option:Analysis on prognostic factors for toxicity in 400 patients.Br J Cancer 88:1199〜206,2003.


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